カスハラ(カスタマーハラスメント)は、顧客からの不当な要求や圧力によって従業員が精神的な苦痛を受ける現象を指します。近年、この問題は深刻化しており、職場環境や労働者のメンタルヘルスに大きな影響を与えています。特に、カスハラによるストレスは生産性を低下させ、従業員の離職率を高める要因ともなります。そこで、労務管理の一環としてカスハラ対策を講じることは、安心して働ける職場環境を作るために不可欠です。
★ ハラスメント対策の実施
2025年6月4日に、カスハラ対策を雇用主に義務付ける法律が国会で可決・成立し対象となる多くの企業がすでに対策を講じていると思います。 労働者が1人でもいれば義務対象となり、この義務に違反した場合、報告懲求命令、助言、指導、勧告公表の対象となるため、施行日(2026年10月1日予定)までには対策は必須となります。
すでに東京都では、「東京都・カスタマー・ハラスメント防止条例」が10月4日に制定され2025年4月1日に施行されています。
事業者にとっては、過去から現在にかけてすでに被害を被った経験もあるかもしれませんし、今後被害を被る可能性もあります。法制化を待つまでもなく喫緊の課題であります。カスハラ被害を受けた従業員が離職してしまうケースもある為、企業の不利益をできるだけ回避するためにも対応が不可欠となっています。
厚生労働省のパワハラ防止指針での事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワハラや顧客からの著しい迷惑行為に関し行う「望ましい取組」の内容の一部として
(1)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 a) 相談先(上司、担当者)を定め、従業員に周知する b) 相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにする
(2) 被害者(主に社員)への配慮の為の取組 a) 被害者のメンタルヘルス不調への相談体制 b) 著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に1人で対応させないこと
(3) 被害を防止するための取組 a) マニュアルの作成 b) 研修の実施 c) 業種に応じた被害の実態や業務の特性等を踏まえ、それぞれに応じた必要な取組み
(1)(2)は労働者の身心の健康を予防(2次予防)することが目的 (3)はカスハラを未然に防止(1次予防)する目的です。
◆ 対応方針の明確化 (3)の1次予防で、マニュアルの作成がありますが作成する場合、多くの時間を費やす可能性が高いので、事前に準備をしておくことが望ましいです。作成において、「対応するケース」「断るケース」の区分を分け、対応方針を明確に打ち出すことが前提となります。 従業員としては、どんな顧客にも対応しないといけないと思い込んでいる場合が多いので、会社の方針を知るだけでも安心材料になると思われます。
◆ 相談体制の整備 実際にカスハラが起きてしまった場合、被害が深刻化しないようにする必要があります。 ※(1)(2)の2次予防 主に「相談体制の整備」と「被害者への配慮の取組」が求められます。 相談窓口の設置は、2段階の相談体制が必要となります。 1 上司は報告・相談を受け初動対応を担い、被害が大きいケースでは、 2 相談窓口につないで、窓口担当者が対応します。
他のハラスメントと違い、実際に顧客と接する各事業所の上司などが、相談を受けることができるようにしておく必要があります。 セクハラやパワハラは被害から少し時間を置いた後に相談を受ける場合が多いのに対し、カスハラは被害直後に報告相談を受けることになります。直後の対応は「応急対応」であり、他の相談とは異なる対応が求められます。相談窓口の役割も幅広くなり、カスハラ対応においては上司の負担も大きいことから、相談窓口も上司からの報告相談への対応が不可欠となります。上司としては、様々なケースを想定し法的なアドバイスが欲しいかもしれません。相談窓口としては人事や総務だけの連携でなく法務部門や顧問弁護士などの連携も必要となります。実際、カスハラの相談は、職場や業種、内容ごとに様々な面があります。職場ごとに試行錯誤しあらゆる面を考慮しながら最適な方法を地道に見つけていかなければならないと思われます。
◆ 上司の初動対応の重要性 カスハラが起きた場合、最初に報告・相談を受けるのは上司です。実際にカスハラを受けた社員は、心理的(肉体的)負担を負います。一般的にハラスメントを受けたとき、いきなり離職意向に繋がることは少なく、まず、誰かに相談したり、会社に申し出たりしてハラスメントの被害を受けないようにする行動を模索します。その時点で、上司や会社側が真摯に対応すれば、被害者の気持ちは少しは和らぎます。しかし、社員の訴えに対し、上司や会社側が何もしてくれず状況の改善がなされない状態が続いてしまうと心理的負担が大きくなり離職意向へとなります。家庭の事情で辞めれない社員の方でも必ず生産性は落ちます。離職意向を持った場合も生産性の向上は望めません。初動対応によって、離職意向そのものを持たせず、できるだけ心理的負担を軽減させてあげることです。そのためにも、初動対応をする上司や、周りの社員による対応が重要となります。
安全配慮義務の観点からもカスハラによって被害を受けた社員の健康被害の深刻化を防止する義務が会社にはあります。