2026年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメント防止のために必要な雇用管理上の措置が求められます。
「また会社のやることが増える」と感じるかもしれません。しかし、カスハラ対策は単なる法改正への対応ではありません。
従業員が安心して働ける職場をつくること。正当なお客様の声を改善につなげること。そして、会社の信頼と成長を守ること。そのための取組です。
この記事では、カスハラ対策の基本を、研修動画の内容に沿ってコンパクトに解説します。
※最後に無料ダウンロード資料集をご用意しています。

カスハラ対策が急がれる理由は、従業員からの相談が増えているためです。
厚生労働省の令和5年度調査では、過去3年間にカスハラに関する相談があった企業の割合は27.9%でした。令和2年度の19.5%から、8.4ポイント上がっています。
この割合は、パワハラ、セクハラに次いで3番目に高い水準です。 カスハラは、一部の接客業だけの問題ではありません。顧客、取引先、利用者など、社外の人と関わる会社であれば、どこでも起こり得る問題です。

カスハラを放置した場合、会社にはいくつかリスクがあります。
・生産性が下がる
長時間の拘束、同じ要求や電話の繰り返しなどに対応している間、本来行うべき業務が止まります。対応する本人だけでなく、周りの従業員にも負担が広がります。
・会社のイメージが下がる
店頭や窓口で威圧的な言動が続けば、ほかのお客様も不安を感じます。従業員が萎縮すれば、安定したサービスの提供も難しくなります。
・大切な従業員が辞める
最も深刻なのは、離職です。
顧客から強い言葉を受け、会社に相談しても「お客様なのだから我慢して」と言われる。従業員は、顧客と会社の両方から見放されたと感じます。
人材流出は、現場だけの問題ではありません。会社の経営に直結する問題です。
その他にも、最悪の場合行政の指導や民事上の責任を問われるリスクも発生します。

カスハラを考えるときのポイントは、次の三つです。
- 顧客等、社外の人による言動であること
- 社会通念上、許される範囲を超えていること
- その結果、従業員の就業環境が害されていること
ただし、すべての苦情やクレームがカスハラになるわけではありません。
正当なご意見や改善のご要望まで切り捨てるのではなく、何が正当なクレームで、何がカスハラに当たり得るのかを、会社として整理しておく必要があります。

クレームとカスハラを分けるときは、二つの軸で考えます。
一つは、要求の内容が妥当かどうかです。
たとえば、会社側の不備で商品が壊れていた場合に、交換を求めることは基本的に正当な要求です。一方で、お客様自身の扱い方で壊れた商品を、会社の責任として無償交換するよう強く求める場合は、不当な要求となる可能性があります。
もう一つは、要求を実現するための手段や態様が相当かどうかです。
要求の内容が正当でも、長時間居座る、大声で怒鳴る、土下座を求める、物を投げるといった行為があれば、やり方は許容される範囲を超えています。内容が正当でも、やり方が行き過ぎればカスハラになり得ます。

パワハラでは、行為者である上司等も、被害を受ける従業員も、会社の内部にいます。そのため、会社は調査し、指導し、必要に応じて処分するという直接対応を取りやすい関係にあります。
一方、カスハラの行為者は顧客、取引先、利用者など、会社の外にいる人です。
会社は従業員を守る必要がありますが、顧客を従業員と同じように指導・処分することはできません。ここに、カスハラ対応の難しさがあります。
だからこそ、現場の従業員一人に対応を任せず、会社が組織として前に出ることが重要です。 「お客様第一」を、従業員を犠牲にする言葉にしてはいけません。

カスハラ対策は、マニュアルを一度作って終わりではありません。
備える
- 会社としての基本方針を示す
- 相談窓口・報告先を決める
- 対応の流れとルールをつくる
- 従業員へ周知し、研修で共有する
大切なのは、紙を一枚作ることではありません。現場が「困ったときに相談できる」「一人で抱え込まなくてよい」と感じられる体制をつくることです。
守る
- 5W1Hで事実を記録する
- 録音、メール、SNS投稿、周囲からの聞き取りを確認する
- 担当を代える、一人にしない、休んでもらう、上司が面談する
事案への対応と同時に、被害を受けた従業員の心身を守ることが必要です。
- 今回の対応は適切だったか
- 現場はどこで困ったか
- ルールや研修で直すべき点はないか
振り返りを次のマニュアル、研修、対応ルールに反映し、再発防止につなげます。
そして、全ての段階に共通する土台があります。それは、相談した従業員を悪者にしないことです。 相談内容のプライバシーを守り、相談や事実確認への協力を理由に、不利益な扱いをしてはいけません。

カスハラの類型は、全部を暗記するためのものではありません。
自社で何が起こりそうか、起きたときに誰がどこまで対応するかを考えるためのチェックリストです。
- 時間拘束型:居座り、長電話など
- リピート型:同じ要求・問い合わせを繰り返す
- 暴言型:大声、侮辱、人格を傷つける発言
- 暴力型:殴る、蹴る、物を投げる
- 威嚇・脅迫型:危害を告げ、恐怖心を与える
- 権威型:立場や肩書を利用して特別扱いを求める
- 店舗外拘束型:店舗の外へ呼び出す、拘束する
- SNS・インターネット上の誹謗中傷型:個人情報の晒し、誹謗中傷の書き込み
- セクハラ型:性的な発言、不必要な身体接触、連絡先をしつこく聞く
業種や業態によって、起こりやすい類型は異なります。自社に当てはめて考えることが、具体的な備えの第一歩です。

カスハラ対策を考えるうえで忘れてはいけないのは、正当なクレームまで排除しないことです。
グッドマンの法則として知られる考え方では、不満を持っても企業に声を上げないお客様が多いとされます。
目の前に届いたクレームの後ろには、声になっていない不満があるかもしれません。
正当なクレームは、会社への攻撃ではありません。商品、サービス、接客、仕組みを改善するためのヒントです。

正当なクレームに迅速かつ誠実に対応できれば、お客様との信頼を取り戻し、継続利用や再購入につながる可能性があります。
一方、不誠実な対応は、悪い口コミが広がるきっかけになります。
大切なのは、次の二つを混同しないことです。
- 正当なクレームには、誠実に対応する
- 暴言、威嚇、不当・過剰な要求からは、従業員を守る

カスハラ対策は、お客様を遠ざけるための取組ではありません。
従業員にとって
安心して働ける職場につながります。心身の健康を守り、高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。
お客様にとって
正当なご意見が受け止められ、改善につながります。誠実なお客様も、安心して利用できる環境になります。
会社にとって
離職防止、生産性の向上、サービスの質の向上、企業イメージの向上につながります。備える。守る。次に生かす。
このサイクルを回すことが、従業員、お客様、そして会社を守ります。
本解説動画
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・カスタマーハラスメント対策研修資料(PDF)
・カスタマーハラスメント対策リーフレット(PDF)
・ポスター(PDF)
・基本方針、社内周知文、相談窓口案内(Word)
・カスハラ発生時の対応フロー(PPTX)
・カスハラ相談対応記録シート(Word)
・カスハラ対応フレーズ集(PPTX)
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