前回に続いて2024年問題について、書き留めていきたいと思います。
●2024年問題
物流業界では常識であった長時間労働が法改正によって規制が強化され、従来の働き方について変化が求められています。 前回みた残業規制は、自動車運転業界などいくつかの適用猶予をうけた業務以外の話です。
自動車運転業務については、2024年からスタートするものの、まだ規制としてはやさしいルール適用となっています。
●年間上限960時間
前回も触れましたが、本来、残業をさせること自体が違法なわけですが、いわゆる労使間の残業に関しての約束である36協定を締結することで残業をさせることができるようになります。
またその残業ルールも原則と例外があり、原則は月45時間、年間360時間を上限としています。これでは残業時間が足りない場合に「臨時的な特別な事情」を決めたうえで、例外として上限を増やすことができるようになっています。
一般的な業務であれば年間720時間。自動車運転業務の場合、年間960時間となってきます。年間960時間ということはざっと月平均80時間です。月の所定労働日数を20日と考えれば、毎日4時間程度といったイメージでしょうか。
1日あたり4時間超の残業があるトラック事業者が全体の約18%という話もあり、少なくともこの18%の会社は改正後の上限ギリギリの水準で働かせていることになります。早期の対応が必要な会社も少なくありません。
●改善基準告示の意味
改善告示基準の話は、実は社会保険労務士の試験勉強では触れた記憶がありません。
告示は法律ではないため、試験勉強ではそれほどウェイトを置かれていないのかもしれませんが、仕事をする上では重要な内容です。告示は法律ではなく、行政が定めた基準のような位置付けであり、罰則があるわけではありませんが、違反があれば行政の監督指導はありえます。監督行政は2つにまたがっており地方運輸局と労働基準監督署が連携しながら監督しているようです。
罰則がないからといって軽率にも違反するわけにはいきません。第一、事業者は経済という生き物を相手にしていますから、行政からの指導以上に、労働者からの信頼を失ったり、世間からの批判を受けることを恐れるべきです。
そういった視点からもただ基準をクリアするのではなく、積極的に改善に取り組むべきと感じます。
●改善基準告示のポイント
一般的な労務管理では労働時間、休憩時間を扱いますが、「拘束時間」「休息期間」「運転時間」などは馴染みがありません。これらについての基準はトラック・バス・タクシーでそれぞれに定められていますが、今回はトラックについてみていきます。
それでは「拘束時間」「休息期間」「運転時間」3つの制約についてメモ程度にまとめます。なお内容は2024年改正前の現行のものとなります。
【拘束時間】始業から終業までの時間で休憩時間も含めた合計時間です。
・原則、月に293時間、労使協定を締結することで320時間まで延長が可能
・1日の拘束時間は13時間(延長する場合も16時間が限度)
【休息期間】勤務終了後、次の拘束時間が始まるまでの完全に自由な時間をいいます。
・原則、11時間以上、少なくとも8時間以上 この拘束時間と休息期間は表裏一体のもので、始業時刻から起算して24時間=拘束16時間以内+休息期間8時間以上という計算です。
【運転時間】
・2日平均9時間/日
・2週間平均44時間/週
【連続運転時間】
・4時間以内
●改善基準告示の改正
これまでの残業上限規制の猶予がなくなることから、この改善基準告示も併せて見直すが進められており、上に挙げた拘束時間や休職期間が変わることになりました。
1年の拘束時間が3,516時間から原則3,300時間(最大3,400時間)
1か月の拘束時間293時間(最大320時間)から原則284時間(最大310時間)
1日の休息期間継続8時間から継続11時間基本とし、継続9時間
以上、他業種に比べ労働法の残業規制が緩いとはいえ、告示を守るためには時間管理が煩雑であることは容易に想像できます。こうも制約が多ければ、日々一人ひとり慎重に確認しておかないといけませんし、人数が多ければその分、苦労も多かろうと思います。
・・・時間管理する従業員の方が長時間労働にならないか心配になりますね。
次回は2024年問題とは直接関係ありませんが、働き方改革や企業を取り巻く法令改正について話していきたいと思います。