◆退職予定者の有給休暇は拒否できる?経営者が押さえるべき実務ポイント
従業員の退職が決まった際、「引き継ぎが終わっていないのに有給休暇を申請された」という場面は少なくありません。しかし、結論から言えば、退職間際であっても有給休暇の取得は原則として拒否できません。
労働基準法において、有給休暇は労働者の権利として強く保護されています。そのため、退職日が近い場合や急な退職であっても、残っている有給休暇の取得申請を会社が拒否することはできません。
会社には「時季変更権」が認められていますが、これは取得日を別の日に変更する権利に限られます。退職が確定している場合、取得日を退職日以降に変更することはできないため、実務上はこの権利を行使できる場面はほとんどありません。
また、引き継ぎが不十分であったとしても、法律上は有給休暇の取得が優先されます。経営者としては、退職の申し出があった時点で、業務引き継ぎと有給消化のスケジュールを早期に整理しておくことが重要です。
◆退職時に有給休暇が消化できない場合のリスク
有給休暇は退職後に繰り越すことができず、未消化分はそのまま消滅します。この点について誤解も多く、「あとで精算すればよい」と考えるのは注意が必要です。
有給休暇を消化させないまま退職させた場合、トラブルに発展するリスクもあります。特に、取得申請を実質的に妨げていたと評価される場合には、企業側の対応が問題視される可能性があります。
◆有給休暇の買い取りは義務ではない
有給休暇の買い取りについては、労働基準法上、原則として認められていません。例外的に、退職によって消滅する有給休暇を会社が任意で買い取ることは違法ではありませんが、あくまで任意であり、法的義務はありません。
そのため、過去の運用や就業規則に明確な定めがない限り、退職時の未消化有給を金銭で補償する必要はないと考えてよいでしょう。
◆実務対応のポイント
トラブルを防ぐためには、以下の点を押さえておくことが重要です。
・退職の申し出があった時点で、有給残日数を確認する
・引き継ぎ計画と有給消化スケジュールを同時に設計する
・就業規則に有給休暇の運用ルールを明記しておく
・買い取りの有無について社内方針を明確にする
経営者としては、「拒否する」という発想ではなく、「どう調整するか」という視点での対応が求められます。