労働基準法では賃金の現金払いが原則とされています。ただし、従業員の同意がある場合には、銀行口座振込も認められています。現在では現金払いを実施している企業はほとんどみかけませんが、法律上の原則は依然として「現金払い」です。
一方で、キャッシュレス決済が普及する中、時代の変化に合わせて給与デジタル払いも可能となりました。今年8月PayPayは資金移動業者として厚生労働大臣から指定を受け、国内初の給与デジタル払い対応サービスを開始しました。これにより、銀行振り込みではなくPayPayアカウントを通じて給与を受け取ることができる時代がいよいよ到来したことになります。
給与デジタル払いを導入するには、労使協定の締結や従業員の個別同意が必要です。これらは厚生労働省が提供するフォーマットを活用して準備できますので、参考にしてください。
アンケートでは、企業の給与デジタル払いへの関心は現時点で低いという結果が出ています。ある調査では「導入予定はない」と回答した企業が約9割、「言葉も知らない」「わからない」といった回答が7%に上りました。
それでも導入を検討する企業にはいくつかの理由があります。例えば、振込手数料の削減や従業員満足度の向上、事務手続きの効率化などです。特に人手不足が深刻な状況では、業務の効率化は企業にとって大きなメリットとなります。また、従業員の満足度向上は、採用や定着率の改善にもつながる重要な視点です。
給与デジタル払いは、効率性だけでなく、企業のイメージ向上や従業員との関係構築にも役立つ可能性があります。この新しい制度を単なる選択肢のひとつとして捉えるのではなく、自社にとってどのような影響があるのかをじっくり考えてみる価値がありそうです。
企業の「賃金のデジタル払い」対応状況アンケート(帝国データバンク)