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半世紀前の“生きがい調査”が今に語ること

半世紀前の“生きがい調査”が今に語ること

以下の文章は、日本の残業について考察する本の抜粋で、残業敬遠主義の論理について考察しているくだりです。

【多様化した生きがい】

 第二は、生きがいの対象が多様化したことである。いままでは、勤労は美徳であるとする社会的風潮が強く存在していたことに加えて、①人びとの所得が貧しく、よりよい生活を望めばそれだけ多くの所得を必要としてきたこと、②仕事の時間が長いので、生きがいを見出そうとすればいきおい仕事のなかしかなかったこと、③貧しい公共財やサービスが、企業努力によって補充されてきたこと、④そのため、人びとの結びつきやコミュニティーが、地域社会ではなく、企業社会のなかで形成され、冠婚葬祭時の協力や相互扶助もこれを中心に行われてきたこと、⑤余暇活動も主として企業の場で進められてきたこと、などから人びとの生きがいは主として仕事中心型のものであり(『国民生活白書』昭和四十九年版)、労働の充実感がサラリーマン生活の拠り所であった。

 しかし現在は、労働時間がかなり短縮されたことや所得水準が高まったことにともなって、生きがいも多様化している。職場での仕事以外にも、社会的奉仕・レジャー活動・交友関係・家庭生活などに自分の生きがいを求めることができる。しかも社会的ムードは、モーレツ型のサラリーマンを否定して、マイホーム主義やレジャー活動に重きをおくようになっている

 日本生産性本部が入社三一五年のサラリーマンを対象にして実施した調査をみよう。「あなたは何に『生きがい」をおいていますか」という質問に対して自信をもってはっきりと「仕事」と答えた者は一八%にすぎず、「仕事と仕事以外の私生活・余暇活動に五分五分」五七%、「仕事以外の私生活・余暇活動」二五%となっている。仕事一筋に生きがいを見出している者よりも、仕事以外の活動に人生の喜びを求めている者の方が多いわけである

     残業”日本的”功罪を洗う昭和50年2月発行 荻原勝 

 今年は昭和でいえばちょうど100年。つまりこの書籍発行から50年が経ったことになります。半世紀も前の話であるのに、最近の経営者と話している話題と変わらないように感じます。なんだか拍子抜けするような、でも少しほっとするような気持ちも感じます。

 今の時代、ワークライフバランス(WLB)といった言葉が当たり前のように使われていますが、50年前から潜在的なテーマになっていたんですね。今の時代を憂う気持ちもありますが、昔からある、変わらない問題だと思うと感じ方も違ってきます。

 当時と違って今は「家庭や余暇を大切にしたい」と公言しても白い目で見られにくくなりましたし、企業の制度としても副業やリモートワークが導入されるなど、「働くこと」の形が少しずつ多様化してきたのは、時代の進歩と言えるでしょう。

 進歩があるにせよ仕事に占める時間の割合は、依然高く、今も昔も大きく変わりません。一日の中で、そして人生の中で、仕事が占める割合は大きい。だからこそ、「仕事が楽しいかどうか」は、人生の充実感を左右する、とても大切な要素なのだと思います

 生きがいの形は変わっても、人生の中で仕事が占める意味は、これからもずっと問い直され続けるテーマなのかもしれません。

 経営者として職場づくりを考えるとき、働く人が楽しくいきいきと働ける職場になることは、会社の成長にもつながる話であり、「仕事に生きがいを感じられる環境をどうつくるか」が大切な視点だと思います。働く時間が長いからこそ、そこに喜びや意味を見出せる場であってほしい。そんな職場が、きっと人をいきいきとさせ、会社もまた元気にしていくのではないでしょうか。

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