お客様を大切にすること、売上を大切にすることは、もちろん企業にとって重要です。
しかし、その思いが強すぎるあまり、「お客様が怒っているのだから、担当者が何とかしなければならない」「多少の暴言は我慢しよう」と、現場任せになっていないでしょうか。
正当なクレームには、真摯に耳を傾け、サービス改善につなげる必要があります。一方で、暴言、脅し、長時間の拘束、過度な要求までを一人の従業員に対応させ続けることは、顧客対応ではなく、従業員を危険にさらすことになりかねません。
そこで重要になるのが、エスカレーションです。
エスカレーションとは、困ったとき、危険を感じたとき、判断に迷ったときに、上司や相談窓口、会社の判断へつなぐことです。カスハラ対応は、担当者が一人で解決するものではなく、組織として対応するものです。
エスカレーションは、現場担当者が対応を放棄することではありません。
厚生労働省の企業向けマニュアルでも、暴力行為やセクハラ行為を受けた場合は、速やかに現場監督者へ相談し、一人で対応しないことが重要とされています。
カスハラ対策は方針やマニュアルを作るという形だけでは十分ではありません。
いざというときに動けるよう、シミュレーションを行うことも大切です。
例えば、「お客様が大声を出し始めたら誰を呼ぶのか」「電話を打ち切る判断は誰がするのか」「担当者は何を記録し、どのように報告するのか」を、あらかじめ練習しておきます。
どこまで取り組むかは、業種や従業員規模などで異なるかもしれませんが、現実的な対策をしないともったいないと感じます。
企業として、お客様も大切、従業員も大切という姿勢を守ることが重要です。
「お客様を大切にする」と「従業員を守る」は、対立するものではありません。そして、現場任せにしない全社対応こそが、正当なクレームを活かし、カスハラには適切に線を引くための土台になります。